現代における人権と環境問題の関わり

日本国神奈川県硬式空手道連盟副会長 / 宮川征一


  人権とは、人間が生まれながらにして持つ自由平等の権利であるにも関わらず、現代文明社会において、未だ世界にはこれらを蔑にして、当然に有する権利まで見放されているのが現状である。

  先進国は今や空前の健康ブームに沸き、医療、医薬品の進歩及び健康食品、健康器具等が普及する反面、発展途上国においてはまだ飢餓を抱える人間が多く、餓死者の横で食べ物を他人から奪い取る悲惨な光景すらある。

  空腹が満たされなければ物を考える気力も湧かないし、他にどのような欲望も起こらない。元々人間は等しく貪欲であり、かつ、欲深く、食欲が満たされると新しい欲望に苛まれる。自己増殖し肥大する欲望は、自己中心的になり独占欲を強め、隣の花が赤く見えたり、自分を過大評価して、虚栄心の塊となってしまうものである。

  大事なことは足るを知り、欲望を抑え全体の調和を考えるという、克己心であり欲望とのバランスである。宇宙から眺めれば地球は限られた小さな球体にすぎず、有限の世界で無限の欲望を解き放そうとするところに様々な矛盾が生じる訳である。全ての生物にとって『食』こそが根源であり、これは、病気や肉体的な側面だけでなく、精神面、更には、生きがい等を含む社会面にたいしても多大な影響を及ぼすものであるが、自然環境の破壊により、『食』の将来が危ぶまれつつある。

  数多くの人間活動がもたらす気象の変化を始め、グローバルチェンジの影響についての科学的な見解は様々に分かれているものの、そのような影響の結果は、大気中の余分な二酸化炭素が植物の成長を促すという有益なものから、砂漠化による農業水の枯渇、海岸線の浸食、大気汚染による健康被害、生物種の絶滅などの地域的な大災害を引き起こすといったものまで、広範囲に及ぶと考えられる。

  地球全体から見た場合、これらの環境破壊と考えられるものには、オゾン層破壊に伴う地球温暖化を始め、海洋汚染、大気汚染等、我々が産業革命以来堂々と築き上げてきた近代機械文明は、人類を飢餓や病苦から解放してきたが、一方では、世界人口や人間活動の規模を爆発的に拡大さえて地球環境破壊という困難な問題を惹起させた。また、経済的未来を徐々に触む様々な環境問題は、エネルギー消費が少なければ、それだけ大気汚染も減少すると承知していながらも、国際社会はなかなか有効な対策を打ち出せないのが現実である。

  様々な地球環境問題の中で、運命共同体である地球をひとつのシステムとしてとらえ、危機にいつ、どのように発生し、これに対して人類は何をすべきか、具体的な方策は不明なれど、近い将来、まず初めに発生する可能性が高いのは食料問題であると考えられる。

  人類は自分自身だけでなく、周りの生き物をも滅びの道へと友連れにしているのではないか。破壊に追いやり、外界を限りなく支配しようとする意欲、それらが自然環境の破壊を惹起し、その事によって、人類の生存危機をもたらしつつあると思料する。

 

2010年5月8日

日本国神奈川県硬式空手道連盟副会長
財団法人国際武術連盟日本国副会長
示念流空手道連盟総帥
拳声館最高師範

宮川征一